Service Company Column News Contact

ホームコラム採用・組織

Recruiting

地域による採用難易度の差と、その構造的な要因

最終更新 2026-08-28

同じ求人内容でも、東京と地方都市では応募の集まり方がまったく違う——採用に関わる人なら誰もが実感する事実です。しかし、「地方だから採れない」という一括りの理解では、打ち手は出てきません。地域による採用難易度の差は、人口移動、産業構造、賃金相場、通勤事情といった複数の構造要因が重なった結果であり、要因ごとに対応できるもの・できないものが分かれます。この記事では、地域差が生まれる構造を分解し、地方企業が取れる現実的な打ち手、そして都市部の企業にとっても有効な「地域を単位にした採用設計」の考え方を解説します。

地域差の実態:何がどれだけ違うのか

採用市場の地域差は、いくつかの数字にはっきり現れます。

重要なのは、これらの差が「地方が一律に不利」という単純な形をしていないことです。都市部は求職者の絶対数が多い一方、競合企業の数と待遇水準も桁違いであり、無名の中小企業にとっては「人はいるが視界に入れない」市場です。地方は母数が少ない一方、競合も少なく、地域内での存在感を築ければ安定した採用ができる市場でもあります。

つまり地域差とは、難易度の高低というよりゲームのルールの違いです。都市型の採用手法を地方に持ち込んでも、地方型の感覚で都市部に出ても、うまくいきません。自社の採用エリアのルールを正しく理解することが出発点です。

構造要因の分解:なぜその差が生まれ、なぜ縮まらないのか

地域差を生む構造は、相互に強化し合う循環になっています。

進学・就職による若年流出。地方の高校生の多くは進学で大都市圏へ移動し、卒業後もそのまま就職します。地元に「戻る理由」——希望する職種の仕事、納得できる待遇、キャリアの展望——が乏しいほど、流出は定着します。

産業構造の偏り。地方の雇用は、製造・建設・医療介護・小売など特定産業に偏りがちで、若年層が希望する職種(企画・IT・クリエイティブなど)の求人が薄い。仕事がないから人が出て、人が出るから企業も拠点を都市に移す、という循環が働きます。

賃金と生活の綱引き。地方は生活コストが低い一方、賃金差はそれ以上に大きいことが多く、可処分所得の比較でも都市が有利な場合があります。さらに、賃金以外の要素(娯楽・教育・医療へのアクセス)も選択に影響します。

採用インフラの薄さ。求職者が少ない市場には民間の採用サービスも投資をしないため、地方では使えるチャネル自体が限られます。これが「募集手段がハローワークと縁故しかない」という状況を生み、企業の採用力の伸びしろも制約します。

この循環は、個社の努力で断ち切れるものではありません。しかし、循環の中に個社が取れるポジションはある——それが次章の主題です。悲観でも精神論でもなく、構造の中での位置取りとして考えることが重要です。

地方企業の打ち手1:地域内で「選ばれる側」に立つ

地方の採用市場の特徴は、母数が少ない代わりに、地域内での相対的な位置が効きやすいことです。都市部で埋没する採用投資が、地方では「地域で一番丁寧な採用をする会社」という認知に変わります。

  1. 地域相場での条件設計 — 全国水準は無理でも、地域相場より一段良い条件は、地方では強力な差別化になる。時給・給与の地域内ポジションを定点で確認し、「地域で上位3割」を維持する
  2. 評判という資産への投資 — 狭い地域では、従業員・元従業員・取引先を通じた評判が採用力に直結する。良い職場であることと、それが伝わる発信(社員の声・職場の実際)は、広告より効く
  3. 地元の接点の開拓 — 高校・高専・専門学校・大学との関係づくり、インターンや職場見学の受け入れ、地域行事への参加。地方の採用は「市場から探す」より「関係から生まれる」比重が高い
  4. リファラルの制度化 — 縁故採用が機能してきた土壌があるなら、それを紹介制度として整備し、社員が友人・知人に声をかけやすい仕組みにする(リファラル制度の設計)

特に強調したいのがUIターン層への設計です。地元を出た若者の中には、結婚・出産・親の介護などの節目で「戻る選択肢」を検討する層が常に存在します。この層にとっての障壁は、戻りたい気持ちではなく、「戻っても良い仕事がない(と思っている)」ことです。地域の企業がキャリアの受け皿として見える状態——仕事内容・待遇・働き方の発信——を作れば、都市で経験を積んだ人材を迎えるルートになります。UIターン採用は、地方企業が都市の人材市場に接続できる数少ない回路です。

地方企業の打ち手2:場所の制約そのものを設計し直す

もうひとつの方向は、「この場所に来てもらう」という前提自体を見直すことです。

業務の切り出しとリモート化。業務を分解すると、その場所にいなければできない仕事と、どこでもできる仕事(経理・設計・マーケティング・システム管理など)が混ざっています。後者を切り出してリモート可能にすれば、採用市場は地域から全国に広がります。フルタイムの移住を求めずとも、都市部の副業・兼業人材に業務単位で参画してもらう形は、専門人材の不足を埋める現実的な手段です。

通勤圏の再定義。地方の通勤は車が前提であり、「通える範囲」は道路事情と駐車場で決まります。送迎・社宅・駐車場の整備、勤務時間の柔軟化(送り迎えと両立できるシフト)によって、通勤圏内の働き手——特に子育て層・シニア層——の就業障壁を下げることは、遠くから人を呼ぶより確実な母集団拡大です。

省人化との併走労働人口減少への対応で述べた通り、地方こそ自動化・省人化投資の優先度が高い。採れない前提の業務設計は、地方企業にとって選択ではなく必須の備えです。

リモート・副業人材の活用は、「都市の人材を安く使う」発想では機能しません。業務の切り出しと受け入れ体制(依頼の明確さ、コミュニケーションの設計)が伴って初めて成果につながります。小さな業務委託から始めて、自社の受け入れ力を育てる順序が現実的です。

都市部企業にも効く:地域を単位にした採用設計

地域差の理解は、地方企業だけのものではありません。都市部の企業にも、地域視点は採用設計の精度を上げます。

拠点・店舗ごとの市場理解。多拠点の企業では、拠点ごとに採用市場がまったく違います。全社一律の求人設計・時給設定ではなく、拠点の地域相場と競合(その駅前で同じ層を採る他社)に合わせた設計が、応募数の差になって返ってきます。「A店は採れるのにB店は採れない」の答えは、多くの場合、店の魅力ではなく地域市場の違いにあります。

通勤圏という本当の市場。候補者の行動は市区町村の境界ではなく、通勤の負担で決まります。「乗り換えなしで30分」「自転車圏」という通勤実感ベースで自社の採用圏を捉え、その圏内の人口構成と競合密度を見る。求人露出の配分(どの駅・どのエリアに広告を出すか)も、この地図に基づいて決めるべきです。

地域内の評判管理。パート・アルバイト採用では特に、応募者の多くは店舗の商圏内の生活者であり、顧客としての体験や地域での評判がそのまま応募意欲に影響します。「客として好きな店」は「働きたい店」の有力候補です。現場の日常の運営品質が、採用力の一部だという認識は、都市部の店舗採用でも中核の視点です。

採用市場は、全国という抽象的な市場ではなく、地域という具体的な市場の集合です。自社が戦う地域のルール——人の流れ、相場、チャネル、評判の伝わり方——を読み解くこと。それが、地域差を嘆きの種から戦略の変数に変える道です。

よくある質問

地方で若手が採れません。若手にこだわるべきでしょうか?

「若手フルタイム」への固執を一度外して、要件から考え直すことを勧めます。その業務に本当に必要なのは若さなのか、体力なのか、学習力なのか。多くの業務は、シニア層・子育て層・時短勤務でも、業務の設計次第で十分担えます。若手採用を諦めるのではなく、若手は中長期の育成枠として地元接点(学校・インターン)で細く長く確保しつつ、足元の戦力は多様な層の就業障壁を下げて確保する。この二本立てが、地方の現実に合った人員構成です。

UIターン採用を始めたいのですが、何から手をつければいいですか?

まず、自社の情報が「戻ることを検討している人」に届く状態を作ることです。具体的には、採用サイトに仕事内容・給与・働き方を具体的に載せる(UIターン検討者は都市の水準で情報の具体性を見ます)、UIターン向けの転職サービス・自治体の移住支援窓口に登録する、そして地元出身の社員がいれば、その人の経験談を発信することです。あわせて、住居や引越しの支援、家族の生活(配偶者の仕事・子どもの学校)への情報提供まで踏み込むと、検討の障壁が大きく下がります。

同じ県内でも、市街地と郊外で応募の集まりが全然違います。なぜですか?

通勤の負担と人口の分布が主因です。車社会の地域では、「通勤30分圏」の人口が事業所の場所で数倍違うことがあり、公共交通が細い地域では数キロの立地差が応募数を大きく左右します。対策は、(1)募集時に通勤の実態(車で◯分・駐車場完備)を具体的に示す、(2)送迎やガソリン代の支援で実質的な通勤圏を広げる、(3)採用が構造的に難しい拠点は、シフトの応援体制や業務の集約など、採用以外の手段も含めて考える、の3段構えです。

地方拠点の求人に都市部と同じ給与は出せません。どう考えればいいですか?

比較の土俵を意識してください。候補者が地域内で仕事を探している場合、比較対象は地域の求人であり、都市部の水準ではなく地域相場での競争力が問われます。一方、UIターン層やリモート人材は都市の水準と比較するため、同じ給与でも「生活コスト込みの実質」や「働き方・裁量」で総合的な魅力を組み立てる必要があります。全員に同じ答えを出そうとせず、採りたい層ごとに比較の土俵を特定し、その土俵で成立する条件パッケージを設計するのが実務です。

地域の同業他社と人材の取り合いになり、消耗しています

狭い市場での賃金の引き上げ合戦は、双方が消耗する構造になりがちです。抜け出す方向は3つあります。第一に、賃金以外の差別化要素(働きやすさ・育成・評判)を積み、賃金だけの比較から外れること。第二に、取り合いの外にいる層(未経験者・復職者・UIターン)への入口を開き、同じ人材プールへの依存を下げること。第三に、地域の学校との関係構築で、市場に出る前の接点を持つこと。今いる人材の定着への投資が最も効率的である点も、忘れずに押さえてください。

自治体の採用支援・助成は活用できますか?

活用の価値があります。多くの自治体が、移住支援金、UIターン採用のマッチング支援、奨学金返還支援、合同企業説明会などの制度を持っており、企業の負担なく採用の入口を増やせます。窓口は自治体の産業・雇用担当部署や、地域のジョブカフェ・移住支援センターです。制度は年度で変わるため、年に一度は最新情報を確認する運用にしてください。制度そのもの以上に、地域の採用支援ネットワークとつながっておくこと自体が、情報と接点の資産になります。

この記事のまとめ

  • 地域差は難易度の高低ではなくゲームのルールの違い。自社エリアの市場構造の理解が出発点
  • 差を生む構造は、若年流出・産業構造の偏り・賃金格差・採用インフラの薄さが循環する仕組み
  • 地方の打ち手の第一は地域内で選ばれる側に立つこと。地域相場での条件・評判・地元接点・リファラル
  • UIターン層は地方企業が都市の人材市場に接続できる回路。情報の具体性と生活面の支援が鍵
  • 場所の制約自体も設計対象。業務の切り出しとリモート化・通勤圏の再定義・省人化の併走
  • 都市部企業にも地域視点は有効。拠点ごとの市場理解・通勤圏ベースの設計・地域の評判管理

採用コストを、成果報酬型に

有効応募1件ごとの課金で、掲載費・初期費用は0円。求人情報を渡すだけで媒体運用まで一貫対応します。

Oubo Pay を見る

関連記事

有効求人倍率の正しい読み方と、自社採用への翻訳方法売り手市場とは何か|言葉の裏にある構造を正しく捉える組織規模の変化に応じて採用基準をどう変えるか採用要件定義が失敗する3つの構造採用予算の社内承認をどう通すか|経営を動かす材料の作り方